彼らの里帰り



2012年8月30日(木)

ニューヨークの出張から戻ってきたのが、7月31日。
明日でひと月になる。

帰国後、すぐに時差ボケが出始めた。
日本の湿気を自分のブログであれだけ礼賛しておきながら
あっという間に、ノックダウンしてしまった。
私は、そんなものである。

寝るわ寝るわ、寝るわ寝るわ。
どれだけ寝ても、まだ眠れる。
身体が垂直になる時間が、ほとんどない。

ある時、時差ボケだけではないなと、気が付いた。
疲れが溜まっているのだろうと。
時は夏休みシーズン。
まぁちょっとならいいか、と「やる気」と「根気」に暇を出した。
「みなさん、みなさん、お知らせです。
お盆の間、夏休みにします。どうぞどこへとおいで下さい。」

もともとあまり図体の大きくない彼らは、
「あ、そうですか」と言うと、
ひらりと飛び上がって、ひゅるひゅると実家に帰ってしまった。

彼らの実家は、こりん星である。
宇宙のどこかにあるらしい。
しばらく前、こりん星PR担当だったテレビタレントが
「自分の実家は千葉県茂原市です」といって、
あっさりカミングアウトしてしまったが、
こりん星自体はどこにも行っていない。

しかし、私はこの星がどこにあるか知らない。
連絡の取りようがない。
私は「やる気」と「根気」がお盆休みから帰ってくるまで
ゆっくりと寝て待つことにした。

眠れる眠れる。
お盆が過ぎた。
多摩川の花火大会も終わった。
まだまだ眠れる。
秋の虫も鳴きはじめた。
葡萄がスーパーに並び始めた。
それでも眠気は収まらない。

どうしたことだろう、彼らはなかなか戻ってこない。
行ったきり、何の便りもない。
どういうつもりなのか。
いつ帰るというのだ。
そんなにこりん星がいいのか。
だったら、勝手にしろ。

というわけにはいかない。
だんだん心配になってきた。

もしかしたら、地球での働き場所、
つまり、私の肉体に問題があるのかもしれない。
筋肉やら骨やら水やらなにやら。
その環境があまりよろしくなくて、彼らは帰ってこないのかもしれない。
これはきっと、無言の抗議行為に違いない。
「やる気」と「根気」のストライキだ。

魚は大好きで、いつも丸ごとむしゃむしゃ食べる。
春の検査で、骨粗鬆症は問題なかった。
骨は大丈夫。

この一年ほど、大好きだったお茶とコーヒーを控え、
カフェインレスの生活をしている。
お酒も1/1000ぐらいに減っている。
水の質もいいはずだ。

問題は、筋肉だ。

運動大嫌いの私は
筋肉がほとんどない。
なるべく体を動かさずに、すべてをやり過ごしたい。
東京に暮らしているために、仕方なく駅まで歩き、
階段を上ったり下りたりするが、
なるべくエスカレーターやエレベーターを使いたい。
ちょっと重いものを持つと、すぐタクシーに乗りたがる。

つまり、体力がないのだ。

「やる気」と「根気」は、筋力の細胞の中に住み込むのか。
そうなると、わが住環境は、甚だお粗末である。
彼らが戻ってこない理由がここにあるとすれば、
これは大問題である。
なぜなら、強化・修復しようにも、
途方もない時間がかかってしまうからである。
それに、、、。
あはは。
肝心の「やる気」と「根気」が留守である。
なんとしたことか。

この秋から私は大忙しになる予定をしている。
しかし、彼らが戻ってこないことには、お話にならない。
大忙しは、あくまで予定。
あくまで、彼ら頼みである。
これは真剣かつ早急に取り組まなければならない
大問題だ。

そう気が付いたとき、
ぱらぱらと粉のようなものが降ってきた。
あ、やる気の粉だ。
「やる気」と「根気」は単体ではない。
粒子の集合体である。
こりん星に帰る時は、集合体が一同揃ってサーっと引き揚げてしまった。

きっと、その中でおそらく「偵察隊粒子群」が戻ってきたのだろう。
「アイツノカクゴハホントウカ、サグッテコイ」
このちょびっとした粒子のお蔭で、
なんとか今やらなければならないことが、進みだした。
有難い。
「大丈夫。本気です。筋肉付けます。約束します。
だから、残りの皆さんに早く戻るように言って下さい。」

「イウノハカンタンダ」
その通り。
あなた方は長年私の筋肉に住み着いているのですね。
私のことはよーく分かっておいでですね。
そう。私はいつも三日坊主。
おためごかしは通用しない。

数日後、また新たに「やる気の粉」が少し戻ってきた。
私の本気が少し伝わったのかもしれない。
よーし、本気で筋肉付けるぞ。
私のこれからのバラ色の生活は、キンニクにかかっている。
来年の夏は、もう里帰りさせないようにしよう。

こりん星。
どこにあるのか、こりん星。
きっと、住みやすい、いい星に違いない。
一度は行ってみたい。





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