2016年11月13日(日)
生産に入ったら、
織機が動いている様子を写真に撮らせてほしい。
そう頼み込んだのは、
サンプルが届いてから、仕上げ加工について何度かやり取りをし、
本発注を済ませた後だった。
「いいですよ。
では、糸の準備ができたらご連絡します。」
快諾を受け、待つこと一か月半。
「これから織りに入りますので、
いつでもいらして下さい。」
何日間織りに掛かりますか?
「一日に織れるのが、6枚ぐらいですから、、、」
ああ、そんなに遅いのか。
古いタイプの織機で、ゆっくりゆっくり織る。
スピードが遅い分、糸にかかる負担が軽減される。
そうすると、繊維本来の復元力を損なわないため、
生地がふっくらと仕上がる。
約束の日を決め、
愛機のNikonを持って、いそいそと出かけて行った。
harukiiの新作の糸が掛けられている織機は、入口から一番近いところにあった。
これが古いシャットル織機。低速でゆっくり織る。
当たり前だが、整然と並ぶたて糸、まっすぐに織られるよこ糸。
織機を横から見たところ。こちらの端から向こうの端までよこ糸を入れた杼(ひ)が行ったり来たりする。
織り上がった生地がどんどん巻き取られていく。
機械メーカーの名前が書いてある。『TSUDAKOMA』 100年続く金沢の老舗企業だ。もちろん現在では最新型織機を製造している。
よこ糸を巻いた管(くだ)。出番を待っている。
紺色がカシミヤ糸、グレーが綿糸。
これがよこ糸を巻いた管を入れる杼(ひ)。たて糸の間を縫って、左右に飛ぶ。
よく見ると、杼の内側に毛皮が貼ってある。
これは、よこ糸がツルツルと出過ぎないようにスピードを抑えるためのもの。
杼の先にも糸のスピードを遅めるための妨害棒が何本か仕掛けてある。
そして、裏側から見ると穴もある。糸の性質を見極めて、棒や穴を使ってよこ糸が出ていくスピードを細かく調整しているのだ。
こういう細工がしてあるのは、初めて見た。
これは、よこ糸が無くなったことを感知するセンサー。 仕組みは、
よこ糸の管には、このように穴が開いている。よこ糸がたくさん巻かれると、この穴は完全にふさがれてしまう。
杼の裏側。杼自体にも穴が開いている。
巻かれているよこ糸が少なくなると、センサーの光が管の穴も杼の穴も突き抜ける。
簡単に図に表すと、こんな仕組みだ。
センサーの光が反応したところで杼の動きは止められ、よこ糸が充分に巻かれた管に交換される。
この交換は人の手だ。
これは、よこ糸が切れたときのセンサー。よく見ると、下から金属の棒が4本出ている。
通常はよこ糸がこの棒を抑え込んでいるが、糸が切れるとこの棒が上に飛び出してきて、杼をストップさせる。
このように、いろいろなところに糸が切れたときのセンサーが仕込まれている。
これは、模様をたて糸に伝えるためのパンチカード。
この穴に複数の情報が盛り込まれていて、柄がきちんと織り上げられる。
織機の向こう側に回ったところ。これから織られるたて糸が一本交互に上下に分かれている。
この間をよこ糸が通るわけだが、これを『綾(あや)』と呼ぶ。
そして、綾を保持する棒が綾棒。軽くて表面が滑らかな竹が使われている。
鉄の大きな機械に竹の棒と荷造り紐がなんとも温かい味を醸し出している。
そして、こちらは別の機械。
先ほどのパンチカードを作る機械。
これも古くて、昔のタイプライターのように一つずつキーを押して穴を開ける。
人動だ。左横についているバーを手で回す。
機械を動かす仕組みは円でできている。いつまでも見ていたい気がする。
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やはり、生地が織られているところを見ることができてよかった。
人も機械も一生懸命動いて互いに連動して、
一枚の生地が出来あがっている。
それを見ると、いろいろなことを大切にしなければと改めて思う。
(続く)
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