2016年11月13日(日)
酷暑が明けたと思ったら、秋は駆け足で過ぎていき、
町の木々が色づく前に冬が来てしまった。
そのあと、申し訳なさそうに戻ってきた
秋のような穏やかな日々。
今は秋なのだろうか、冬なのだろうか。
こんな日はあと何日続くのだろうか。
そんなことはどうでもよい。
優しい陽射しの元で、
温かい飲み物を飲みながら、
好きな音楽を流し、この時を楽しむのが、
自然への一番の感謝であろうと思う。
そんなことをつらつらと思いながら、
この文章を書いている。
なんであったろうか。
何を書くつもりであったか。
あ、そうだ。
前回の続きだった。
新作の【カシミヤコットン変りギンガムストール】のことだ。
*********
今年こそ商品化しようと思い立ち、
借りていたストールを基に、
意匠と規格をharukiiらしく改め、
色やら何やら機屋さんとやり取りをし、
サンプル作製を依頼した。
それは今年の真夏。
異常気象と言われるような気温が続いている頃だった。
ここ毎年異常気象と言われているため、
暑いのには驚かないが、
しかしそれにしても暑すぎる。
30℃が涼しいと思われるような日々だった。
最初のサンプル生地が届いた。
想像していた以上に、普通だ。
普通を目指していたので、それでいいのだが、
実際に目にすると、「売れるのだろうか」という心配がよぎる。
早速生地にはさみを入れ、
ストールに仕立てる。
いつものようにLサイズ、Sサイズ、Miniサイズと、
三つのサイズ展開。
どれも使い勝手がよさそうだ。
一番気になる肌触りは。。。
これは、最高。
間違いない。
優しくて安心感がある。
仕上げ工程で
「本当に、出来るだけ柔らかくしてほしいんです。
それも、繊維をいじめるような薬剤を使うことなしに。
カシミヤやコットンが持つ、生来の柔らかさを
損ないたくないんです。」
そう何度も念を押した私の要求に、
機屋さんの若い担当者さんは辛抱強く応えてくれた。
今回使ったカシミヤもコットンも、
上質な糸を選んだ。
どちらも確かな伝統と技術を持つ
日本国内の工場で紡績されている。
(紡績=繊維から糸をつくること)
カシミヤの方は、アラシャンカシミヤという高級種で、
貴重な繊維だ。
染色も綿の段階で施されているため、
確実に柔らかい。
コットンはスーピマという種類の超長綿使ってあり、
とても滑らかだ。
先日あるバイヤーさんに、
「どうしてカシミヤとコットンを組み合わせようと思ったのですか」と聞かれた。
その時私は、
「お肉やお魚を食べると、野菜も欲しくなるでしょう。
やはり日本人は農耕民族。
タンパク質だけでは生きていけない。
植物繊維を摂ることでバランスが取れるのだと思う」
と答えた。
その時咄嗟に出た言葉だったけれど、
今更ながら本当にそうだなと思う。
身体に優しいもの、必要な物として
内臓が欲するものと皮膚が欲するものは、
同じであって何ら不思議はない。
むしろそれが自然だと思う。
アジアの農耕民族の血の中に受け継いでいるバランス感覚。
それが私にカシミヤとコットンを同量使った生地を
「安心する、心地よい」と思わせているのだと思う。
作業を終え、
さんざんサンプルを首に巻いたり、
肌に押し付けたりして、
その肌触りを確認したあと、
生地の切れ端を膝に置きながら、
パソコンで事務作業をしていた。
膝のあたりが何だか温かい。
それはもちろん、小さいながらも
カシミヤコットンの生地を置いているからだ。
冷房を効かせた室内での事務作業。
そこで感じたのは、
優しい温かさだった。
猫や犬を飼っている人は
いつもこういう温かさを感じているのではないかしら。
ご主人の仕事中に、その膝の上に乗っかって
気持ちよさそうに目を細め、うずくまっている猫や犬。
その体温によって飼い主もペットも両方癒されている。
会話なく、お互いが別のことに関心を寄せつつ、
しっかりとお互いを確かめ合っている。
そんな光景を写真やテレビで
何度も見たことがある。
私の膝の上にある小切れは、
大げさかもしれないけれど、
愛玩するペットが与えてくれる
無償の優しさに似ている気がしてならなかった。
残暑真っ只中の肌には
まだそのストールの暖かさが正しく評価できなかったが、
「この優しさがあれば、大丈夫。」
そう信じられたひと時だった。
そうだ。
普通で良いのだ。
普通で、大げさでなく、
どこまでも信頼できて、優しくて、
いつもそばにいてほしいと思う。
そんな愛犬、愛猫のような存在。
そんなストールを作りたかったのだ。
▲ワイン
(続く)
2016秋冬 カシミヤコットン変りギンガムストール #1
2016秋冬 カシミヤコットン変りギンガムストール #3
2016秋冬 カシミヤコットン変りギンガムストール #4
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