2012年8月13日(月)
オフコースというバンドは、最初2人組だった。
そのころ、私は高校に入ったばかり。
彼らの歌をLP盤のレコードでよく聞いていた。
そのころから、あまり音楽に興味なかった私だが、
二人の年上の男性の澄んだ声は、
思春期のこころにすんなり入ってきた。
フォークソング全盛期の少しあとの頃だったと思う。
ちょっとナイーブなメロディが新鮮だったのだろう。
しかし、その歌詞の意味には
当時あまり興味なかった。
それは、いまこうして歌詞を書き出してみるとよくわかる。
『秋の気配』
あれがあなたの好きな場所
港が見下ろせるこだかい公園
あなたの声が小さくなる
僕は黙って外を見てる
眼を閉じて 息を止めて
さかのぼる ほんのひととき
こんなことは今までなかった
ぼくがあなたから離れてゆく
ぼくがあなたから離れてゆく
たそがれは風を止めて
ちぎれた雲はまたひとつになる
「あのうただけは ほかの誰にも
うたわないでね ただそれだけ」
大いなる河のように
時は流れ 戻るすべもない
こんなことは今までなかった
別れの言葉をさがしている
別れの言葉をさがしている
ああ嘘でもいいから
ほほえむふりをして
ぼくのせいいっぱいのやさしさを
あなたは受けとめる筈もない
こんなことは今までなかった
ぼくがあなたから離れてゆく
ああ、これは男性の方が女性を振る前の
最後のデートの場面なのね。
初めて気が付いた。
それと知らずに、姉といい気で歌っていた。
「目を閉じて、息を止めて
鼻も止め、死んでしまう~」なんて替え歌まで作って。
今、こんな場面や心情をテーマにした歌を作ったら
はたして売れるのだろうか。
時代が求めるのは、勇気づける歌詞ばかり。
「きっと大丈夫」
「がんばれ」
「がんばらなくてもいい」
「きっとよくなる」
「あなたは変れる」
「あなたのままでいい」
つまり、どうであっても100%大丈夫という歌。
そういうのが主流になって、もう久しい気がする。
あのころは女々しい歌が流行っていた。
きっと、そんな歌を楽しめる時代だったのだろう。
時代が幸福だったのだ。
架空の世界でちょっとした苦しみなら、うっとりと楽しめたのだ。
それはそれでいい。
そういう時代だったのだ。
しかし、別れを切り出す男性が
「僕の優しさを受け止めてほしい」
「嘘でもいいから微笑んでほしい」
なんていうのは、話が違う。
まったくもう。
甘えているにもほどがある。
優しい人なら、相手にはそんなこと要求しない。
時代がどうであれ、優しさの形は変わらない。
藤沢周平の主人公は、そんなこと絶対に言わない。
小田さんは、男性の弱さを分かって書いていたのか。
それとも、彼もまだ若くて、それに気が付かなかったのか。
こんな身勝手な歌でも、あの時代は許された。
オフコースの優しい歌声とメランコリックなメロディにやられた。
まだ思春期の私には
歌詞はどうでもよかったし
甘えん坊の男性の言い分も
「ナイーブな大人のこころ」として
新鮮に受け止めたのだろう。
昨日散歩で「秋の気配」を感じてブログにアップしたので、
ふと、この曲を思い出した。
うろ覚えだった歌詞を思い出して、懐かしもうと思ったが、
気持ちは全く違う方向に行ってしまった。
身勝手な恋の終焉を「秋の気配」と例えられて、ちょっとがっかり。
やっぱり、私は今の時代に生きている。
私の「秋の気配」は、他の素敵な何かで塗りなおそう。
私も大人になったなぁ。
あ、もしかして、これが私の「秋の気配」?
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