2012年9月1日(土)
harukii は、大切にしようと思っていることがいくつかある。
片手の指では数えきれないほどのことを思っているが、
そのなかでも、これは絶対に守りたい、ということは
片手に収めるようにしている。
その中の一つが、出自を明確にするということ。
マフラーやスカーフの原料が、様々な場所を移動し、
その都度形を変えて、徐々に商品の顔に近づき、
最終的にお客様の手元に渡るまで
その道のりをすべてわかっていたい。
どこで生まれて、どういう場所で加工されて
ここまで辿り着いたのか。
何かの縁があって自分の元に来た物の、
その素性をすべて知っておきたい。
知ることで、何か安心できる。
実際に行ったことがない土地でも、
そこを通ってきたのだと知れば
愛着が沸く。
そして、できればお客様ともその情報を共有したい。
harukiiの商品を身に付ける時、
お客様にも安心して使って頂きたいからだ。
天然素材のマフラーやスカーフは、大体このような工程で製造される。
原料の採取。(シルク、ウール、コットン、リネンなど)
↓
紡績(ぼうせき)。= 原料を糸にすること。
↓
糸の下準備。(染色、(糊付けなど)
↓
たて糸の整経(せいけい)。= 生産する生地の長さ、幅になるようにたて糸を準備する。
↓
織付け。
↓
糊落し。
↓
乾燥とプレス。
↓
一枚一枚に切り離し。
↓
検反(けんたん)。= 生地にキズや汚れがないか、最終的にチェックすること。
↓
房づくり。
↓
ラベル付け&袋入れ。
↓
出荷
出荷の先は、問屋さんやアパレル会社さん、
または小売り店さん。
harukiiが目指す「出自を明確にする」というのは、
「原料採取」から「ラベル付け&袋入れ」まで、
すべての段階をどこで行ったかを把握する、ということである。
国内の工程は、だいたい分かりやすいが
海外の工程になると、不明なことも多々ある。
その不明なところを無くし、すべて明らかにしたモノづくりをしたいと思うのである。
2013年春夏の商品は、糸の下準備からはすべて国内である。
原料には、シルク、ウール、リネン、コットン、和紙を使った。
それぞれの採取地は
・シルク=ベトナム
・ウール=オーストラリア
・リネン=ヨーロッパ
・コットン=インド
・マニラ麻(和紙の原料)=エクアドル
残念ながら、リネンだけは国が明確になっていない。
今後も調べていくが、もしかしたら分からないかもしれない。
というのは、紡績会社の企業秘密の場合があるからである。
もしくは、原料を採取した国が複数あり、一か所に限定できないこともある。
まぁ、徐々に調べていこう。
きっとわかるときがくる。
紡績だって糸の準備だって、
一昔前なら、どこでどうやって行っていたか、
一切公表していなかった。
技術も情報も山と川に囲まれて、その産地の外に出ていかなかった。
今、こうやって教えてもらえるは、
時代があらゆる商品の出どころを明らかにすることを求めているからだ。
そしてもう一つの理由。
一つの産地だけでは、モノづくりが難しくなった。
工場がばたばたと無くなり、設備も技術もまったく残っていない産地が出始めた。
だから、山を越え、川を越えて、他の産地と協力し始めた。
今回のharukiiの製品は、山梨県の郡内地方で作っている。
※郡内地方 = 山梨県東半部の古称。富士吉田市・都留市・大月市を含む一帯。郡内織の産地。
ここはとても恵まれている。
糸の下準備から出荷まで、ほとんどすべて自分の産地内でできるからだ。ここは元来絹織物の産地だ。
今では様々な繊維を扱うが、
条件によっては産地内で処理しにくい場合がある。
その場合は、その工程だけ他産地に出す。
そして、加工が済んだ糸や生地は再び郡内に戻ってきて、次の工程に進む。
考えてみれば、すごいことだ。
海外で育てられた原料が、日本に来て、様々な工場を渡り歩き、
全く形の違うものに生まれ変わる。
ここにある一枚のストール。
シルクとリネンが使われている。
このシルクとリネンに触った職人さんは、一体何人いたのだろう。
蚕が生まれ、リネンの種が蒔かれてから、
一体どのくらいの月日を経て、このストールになったのだろう。
こうやって想像していくと、
世界と国内の旅行を一篇にした気分になる。
リネンの種は、一体どこに撒かれたのだろう。
なんだか無性に気になってきた。
「続 製品の出自と道のり」
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