2012年9月9日(日)
とりあえず、なんとか心を落ち着かせようとした。
この手元にある綺麗なサンプル。
今回はこの商品に縁があるのかもしれない。
このサンプルは、私がイメージしたものと違うけれど、
商品として完成度が高ければ、お客様にお見せできる。
どうだろう。
商品として成り立っているだろうか。
だめだ。
ガーゼマフラーのイメージがどこにも去ってくれない。
あれとつい比べてしまう。
冷静に、冷静に。
落ち着いて、元気を出して。
頑張って。
だめだ。
仕方がない。
今晩寝て、明日の朝、新鮮な気持ちで見てみよう。
その時決めよう。
展示会に掛けるか掛けないか、
午後、やっと武藤さんに電話がつながった。
「サンプル、今朝届きました。有難うございました。」
「あ、そう。よかった。いやぁ、間に合ってよかったよ。」
「あのう。。。」
心を落ち着かせる。
「綾のブロックチェックのマフラーなんですけど、あれガーゼの打ち込みですか?」
「え? ガーゼ? 違うよ。ほら、前にやった普通の綾。
あれよりちょっと打ち込み変えてあるけど。」
「・・・・・・・」
「え? ガーゼだっけ?」
「・・・あのう。タオルのように使える、ガーゼのようなマフラーをお願いしたはずなんですが・・・。」
「・・・・・・・」
今度は、武藤さんが無言になった。
あの日、商談室のテーブルにあった、まだ糊が付いている状態の生地。
あれがこれだったのだ。
もしあの時気が付いていれば、まだ何か手の打ちようがあったかもしれない。
私の経験不足で、全く気が付かなかった。
糊を落とせばどんな表情になるか、わかるはずだ。
今その写真を見ると、あぁ、ここで充分気づけるはずだ、と思う。
色の良さと光沢に魅せられて、打ち込みのことまで気が回らなかった。
あれは、ガーゼではない。
一昨日の会話で。
「これにも刺繍入れといたよ。」
「え? そうなんですか? 入りました?」
「うん、これならギリギリ入るって。いい感じだよ。」
「わぁ。楽しみです。そうですね。刺繍入るといいでしょうねぇ。」
ガーゼに刺繍は入れられない。
生地が粗すぎて、ちゃんとした形にならない。
そこに気が回らなかった。
ここでも、わたしは見逃した。
どういうふうに言葉を結んだのか、覚えていない。
電話が切れたあと、私はiPhoneを握ったまま動かなかった。
仕方がない。
もうどうしようもない。
発注書が明確ではなかった。
きちんと指示を出していなかった。
私の責任だ。
お互いに違うものをイメージして、
途中で確認せずにここまで進んできてしまった。
分かりやすい発注書にしなかった私が悪い。
途中で確認しなかった私が悪い。
仕方がない。
こんなこと、いままでも何度もあった。
自分の責任で取り返しのつかない失敗を幾度もした。
これからだって、何度もあるだろう。
もっと大変な失敗だってあるだろう。
こういうとき、すぐに気持ちを切り替えて
次に起こすべきアクションに移らなければならない。
今、私は何をするべきか。
今度のシーズンは、ガーゼマフラーは諦める。
定番にする商品なのだから、もっと時間がかかってしかるべき。
じっくりと開発をしよう。
きっと、そういうことなのだ。
そいういう意味なのだ。
残っている作業をサクサクと行おう。
他のストールのサイズを測り、下げ札を作り、
写真を撮って、プライスリストの作業を進めよう。
名刺やカードの印刷をしよう。
あさって会場に持っていく備品のチェックをしよう。
それらの作業の性能とスピードを上げるために、
私には今やるべきことがある。
私はそれから3時間、身体を丸めて、ぐっすりと眠った。
事態は次の朝、急展開することになる。
(続く)
(続く)
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