2013年1月23日(水)
~「二度の誕生日」の追記~
やはり、昔聞いた名づけのエピソードはかなりうろ覚えで、
事実とはかなり異なっていた。
さっそくご本人から訂正依頼があり、
加えて、昭和初期の通信事情なども併せて知るところとなった。
*****
ひ弱に生まれた女の子に、彼女の父親はどんな名前を付けてよいか、
とても悩んだ。
そして、キリスト教の敬虔な信者であった彼は、
ある日聖書を開いたとき、最初に目に飛び込んだ言葉を名前にしようと思った。
(ここまでは同じ)
戸籍法では、昭和初期も今も変らず、
出生届を2週間以内に済ませなければならない。
それを過ぎると、罰金が科せられる。
これも、昔も今も同じ。
第百三十五条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。
当時の罰金がいくらかは分からないが、
出生届を本籍地の役場に提出するのに、
当時は宅配便もなく、また役場同士の通信も今のようにはいかない。
今日送って明日届ける、というわけにはいかないのだ。
そこで、父親は本籍地に住む親せきに
電報で女の子の名前を知らせ、
代わりに役場に届けてもらうように依頼した。
名前を差し戻したのは、この親戚のオジサンである。
(前回のブログでは、役場の担当者と言いましたが、間違いでした。すみません。)
「女の子に、こんな男みたいな名前をつけるな。」
父親が考えた名前は、聖書の中に出てきた単語をひらがなにして
二文字に縮めたもの。
女の子の名前として
あや
とし
ちよ
こういったひらがな二文字の名前は、当時、
いや今でも、よく見かける。
だが、この父親が選んだ言葉は、いくらひらがなにして縮めても、
なんとも名前にほど遠いものだった。
親戚のオジサンはとても心配したのである。
かわいい女の子の将来が不安だ。
その差し戻しも電報できたのか、それとも速達の書面で来たのか。
それはわからないが、
とにかく生まれてから2週間が過ぎようとしている。
罰金を科せられてはたまらない。
そこで、父親は出生の日を遅らせることにしたのだ。
「親が一生懸命考えた名前の、どこがわるい。」
父親は、最初の案を押し通した。
考え直さなかったのだ。
かくして、そのへんてこりんなひらがな二文字の名前は
随分遅れて出生地の役場に届けられた。
誕生日は実際の日より、十日後になった。
*****
以上が、誕生日が二つある、本当の経緯だそうです。
当時の罰金は、おそらく今の5万円相当だったのでしょう。
「正当な理由がなくて」という正当な理由とは、どんなものでしょう。
上記のような理由は正当とはならないのでしょうか。。。
実はちょっとした後日談があります。
ひ弱な女の子は、ひ弱なりにすくすく育ち、
生まれて24年後に
彼女は結婚することになりました。
結婚届を提出しようとした時です。
届け係の人が
「今なら名前を変えられますよ」と
教えて下さったそうです。
やはり、その方にも「へんてこりんな名前」と映ったのでしょうね。
二十数年経っても、そのなまえは立派にへんてこりんだったのです。
その言葉に、本人もかなり心が動いたそうです。
それまで、やはり名前で相当苦労したそうですから。
実際に、いろいろ漢字も考えたりして、
本当に悩みました。
でも、やはり思いとどまりました。
「親が一生懸命考えて付けてくれた名前。
それを大切に、一生一緒に生きていこう。」
今では「このひらがな何と読むの?」と聞く人はいませんが、
やはり立派にへんてこりんです。
でも、彼女はこの名前に大きな誇りを持っています。
きっと、ですけれど。
ただし、彼女の持論は
「名前を付けるなら、普通がイイ」です。
彼女の娘たちは、二人ともごく普通の名前です。
おしまい。
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