2012年6月25日(月)
どちらかというと、大人しい印象なのは、
色も黒と白の二色だけを使って、全体的にグレーに見えるから。
このストールの特徴は、その手触り。
ふんわりと柔らかく、さらりとしていて、かつしっかりとした張り。
「柞蚕糸(さくさんし)」という絹糸を使っている。
※ 柞蚕は、ヤママユ蛾のこと。野蚕(野で飼育される蚕)の代表格。家蚕(家内で飼育される蚕)と違い、野外の林で放し飼いされる。家蚕よりも大きく、太い糸を吐く。主な生産地は中国。
この感触を残し、色に変化を付けたいと思った。
ところが、機屋さんに聞くと、
今柞蚕糸が手に入りにくい、という。
さぁ、どうしよう。
柞蚕糸を使わずに、この風合いを出すには、
どんな素材を使ったらいいだろう。
蚕が吐く糸には、セリシンという糊状のものが付いている。
それを普通は完全に取り除いて使用するが、
わざといくぶん残したままにする場合もある。
それは、糸に張りを出すため。
このペイズリーのストールにも、
たて糸にセリシンを残した家蚕の絹糸を使ってみよう。
柞蚕糸の張りに近付けるには、
その糸を全体に対してどのくらい使用するかを
見極めなければならない。
分量によって、「柔らかさ」と「張り」のバランスが
微妙に違ってくる。
多すぎると、固くなりすぎる。
少なすぎると、張りがなくなる。
微妙なさじ加減。
さっそく機屋さんに相談だ。
「ふーん、そうだねぇ。じゃぁねぇ、、、。」
ここは、機屋さんの経験と勘に頼る。
これまでシルクをいやというほど扱ってきた機屋さんだ。
きっと、風合いをピタリと近付けてくれるだろう。
さっそく、染色工場に糸の染めが手配された。
色は、ワイン色、紫、緑の三色に決めた。
先染めなので、たて糸とよこ糸が交差して色が混ざったように見える。
思った通りの色合いに上がってくるかは、
サンプルが仕上がってこないとわからない。
こうやって、私にも経験が一つ一つ積まれていく。
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