山形県鶴岡市に行ってきた



2012年6月13日(水)

米沢を出た後、日本海の方へ北上し、庄内平野を訪れた。
この平野は山形一の広さを誇るという。
本当に、広い。
空はどこまでも広く、海から吹く風は彼方の連峰に向かって気持ちよく吹いていく。
ここは山形県鶴岡市。庄内平野の南に位置する。

その昔、鶴岡には鶴ヶ岡城があり、庄内藩の城下町として栄えた。
そのころのことを題材に多くの小説を書いているのが
私の大好きな藤沢周平である。

しかし、今回は藤沢周平の世界に浸る時間はない。
とある理由で、予習も不十分である。
今日は見る、見る、見るの一日となる。
絹織物の製造工程を見て回るのである。
こんなチャンスはめったにない。
貴重な時間、限られた時間を使って、どこまで吸収できるか。

まず訪れたのは、絹糸を作る「松岡株式会社」。
製糸工場といえば、明治5年に創業した、富岡製糸場が有名である。
ピーク時には国内に43万軒もあった製糸工場は、現在2社しかない。
そのうちの一社が松岡株式会社である。

鶴岡には製織部門があり、シルクのスカーフなどの生地を織っている。
生糸をボビンにまき直し、たて糸を準備する工程を見せて頂いた。

生糸を大枠からボビンに巻き取っているところ。

ボビンを並べ、たて糸用に引き出していく。

ボビンから引き出された糸を、整経機に巻き取っていく。

整経機に巻き取る前に、綜絖(そうこう)という大きな櫛の目に糸を通す。
この作業は、どんな近代的な工場でも、人の手に頼らざるを得ないということだ。

写真ではよく見えないが、
ごくごく細い糸が切れることなく巻き取られていく。
たて糸は数万本という気の遠くなるような数。
しかし、工場の中は思ったよりずっと静か。
織る前の工程は、音が立たない。
というより、絹糸に無理な力がかかったり、
どこかに引っかからないよう、
すべての工程を糸が滑らかに通過するように
道具を工夫してあるのだ。

その工場で、細くて整った生糸とは対照的な
「kiboso」という太い糸を見せてもらった。
きびそは、繭が糸を吐き始める時に出す、粗い糸。
吐き始めなので、蛋白質が多く含まれている。
しかし、その部分は粗野で生糸に使えない。
そのきびそだけを集め、紡いで作ったのが「kibiso」なのである。

太くてしなやか。
荒々しくて、温かい。
何ともいえず風合いの良い糸だった。

大起業で大きな工場と多くの社員を擁す企業が
効率だけを追求していては生まれないであろう
このような手紡ぎの風合いを残した糸を開発している。
旧来のやり方を変え、新しいことに挑戦し続けている会社だけが、
今の日本に残っているのだ。

● 松岡株式会社 http://www.matuoka.jp/
● kibiso tsuruoka silk   http://kibiso.jp/

★ kibiso のトップページ左下にある動画を、ぜひ見てください。
素晴らしいんですから。出来れば音付きで。
上質のショートフィルムを見ているようです。



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