2013春夏 シルクカシミヤ平織ストール #1



2012年6月27日(水)

数年前、機屋さんがこんなことを言った。
「ロロ・ピアーナの糸、あるよ」
「え?」
「興味ある?」
「あります! 大あり!」

時は遡って、もう15年ぐらい前。
私はビスポークというものにとても興味を持っていた。

英語で bespoke (ビスポーク)、イタリア語で su mizura (ス・ミズーラ)。
お仕立服のことである。
当時はメンズ雑誌を舐めるように読んでいた。

メンズ雑誌は生地や製法の説明が、詳細に載っている。
工場の取材も、丁寧になされる。
「ションヘルで織ったスーツ地」なんて脚注を見ると
血が騒いだ。

※ ションヘル=旧式の低速織機。糸を横に運ぶスピードが遅いので、糸に無理な力がかからず、生地がふっくらと仕上がる。

で、そのうち好奇心がむずむずして、一度作ってしまった。
ビスポークのスーツ。
もちろん、女性仕様で。

テーラーに出かけ、生地を選び、スーツの形を選ぶ。

生地を選ぶとき、生地帳を何冊か見せてもらった。
「こちらがロロ・ピアーナ社、こちらがゼニア社」
「で、こちらが国産の生地」
イタリアやフランスの生地は、
一社ずつそれぞれの会社の生地だけをまとめた生地帳なのに対して、
日本製の生地は、「御幸毛織」以外は
生地の会社名も分からず、一冊にまとめられていた。
その日は「国産の生地で仕立てよう」と決めて出かけて来ていた。
だから、その十把一からげのような扱いに、ちょっと落胆した。

あこがれの「ロロ・ピアーナ」の生地帳は、
それだけ見ていてもうっとりする。
ロロの生地はどれもしなやかで光沢があり、ドレープが美しかった。
随分前に、これもメンズ雑誌に出ていたが、
生地帳を作るときも、その生地の並べ方に神経を使っているという。
私は結局、ロロ社の薄いストライプの入った、濃紺の生地を選んだ。

それ以来、私は「ロロ・ピアーナの生地を使った女」として
まるでロロ社の上顧客のような気分になっている。

で、機屋さんとの会話に戻る。

「ロロ・ピアーナもいいんだけど、もっといい糸あるよ。」
「え、どんな糸ですか?」
「それはねぇ。。。へへへ。」
もったいぶっている。
「俺っちで別注で作ってもらってるんだ」
「へぇぇぇぇ。」

驚いてしまった。
普通、機屋さんが別注で糸を作ることはない。
糸をオリジナルで作る場合、何百キロという発注量になる。
それだけの量を消化するには、大量の生地を織らなければならない。
しかし、お客様からの発注なしに、
機屋さんが勝手に生地を織ることはしない。
だから、糸は倉庫に長い間眠ることになる。
そんな在庫を長期間持つリスクを、
機屋さんは決して取らない。
普通は、糸問屋さんの在庫から、必要量だけ買うのだ。

しかし、この機屋さんは、自分で糸を別注してしまったのだ。
その糸は、シルクとカシミヤの混紡糸。
それがまた、実にいい。
しっとり、ねっとりしたカシミヤと、腰と張りのあるシルクが
絶妙な分量で混ざっている。
その糸で織られたストールのサンプルを巻いてみる。
しっとしりていて、ふっくらしていて、とても温かい。
そのうち、何ともいえない幸福な気持ちになる。

その糸を見せてもらって以来、
私はその糸にぞっこんである。

来年の早春用に、この糸を100%使用したストールを入れる。
サイズは男性でもゆったりと巻ける大きさ。
色は3色。グリーン、ピンク、ブルー。
それをゆったりとしたぼかし染めにしてもらう。

糸の在庫はたっぷりあるし、ストールのサイズもたっぷり。
そして、一枚一枚たっぷりの洗液のなかでゆっくり染められるストールは、
さぞ仕上がりの表情も、余裕のある顔をしているだろう。

このストールを首にぐるぐる巻いて
まだ春浅い早朝の森を、愛犬と一緒に散歩しよう。
(もし犬を飼っていればの話だが。)



● ロロ・ピアーナ のウェブサイトはこちら >>>>>

● ションヘルの動画を見つけました。>>>>> 音が大きいので気を付けてくださいね。



◆こちらの商品は、【harukii オンラインショップ】で購入できます。
 L、S、XSの3サイズそろえております。
 また、他にも色違いがございます。
 寒さが増すこの季節、ぜひ軽くて暖かいこのストールをお試しください。






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