2012年6月11日(月)
山形の二泊三日の旅から戻った。
多くの人と挨拶を交わし、語らい、
さまざまな刺激と「ありがとう」を受け取った旅だった。
7日はまず、山形県米沢市に行ってきた。
東京からの移動はややドタバタしたが、
米沢に入ってからはずっと、しっとり落ち着いた時間が待っていた。
米沢は絹織物の町である。
9年前に私が生地の仕事に携わるようになって
すぐに知り合った会社がある。
粟野商事と那須野織物。
粟野商事さんは明治38年創業の呉服問屋さんである。
現社長のお母様である粟野明子さんが20年ほど前に
「クレッシェンド米沢」というグループを立ち上げ、
米沢の機屋(はたや)さんたちを取りまとめて、
ストール専門の商売を始めた。
※機屋 = 織物工場。日本では家族単位で営む小さな工場も多い。
クレッシェンドというのは、「だんだん大きく」という音楽用語。
その名の通り、クレッシェンド米沢は毎年ファンを増やし、
今ではそのストールは有名デパートなどで販売され、
また毎シーズン、ニューヨーク近代美術館のMoMA Storeに取り上げられている。
クレッシェンドのストールは、伝統的な織物の技法にさらに創意工夫を加え、
見事に装飾的で華やかである。
クレッシェンドのストールを見るたびに思うのは
冬の雪景色のモノトーンと、
それに対比するような人々の暮らしや心の中の色である。
それらの色は、例えば同じ北国でも、
北欧などに見られる単純明快なものではなく、
水や空気や土を通して屈折してこちらに届く、鈍い光のようなもの。
けっして人々を刺さず、驚かさず、脅かさず。
かといって、誰もが容易にそのは光に近付けるわけではない。
色を通して輝く光を受け止められるのは、
その光に近付くことを許されたものだけ。
そんな気高さと厳しさを感じてしまう。
夜、粟野商事の近くにできたお寿司屋さんでごちそうになった。
その時、明子さんが何度も繰り返された言葉が、心に残る。
「なんてったて人と人。人とのつながりが一番大切だからね。」
もっともっと色の魔法に掛かりたい。
その光に近付きたい。
その奥深い所には何があるのかを見てみたい。
それには、本当の心のつながりを持たなければならない。
表面的なものではなく、ほんとうのつながり。
米沢との付き合いは、今始まったばかりだという気がする。
●粟野商事 http://www.omn.ne.jp/~awanocop/
●クレッシェンド米沢 http://www.omn.ne.jp/~awanocop/cre.html
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