2012年6月15日(金)
最後にプリント工場を見せて頂いた。
有限会社芳村捺染(なっせん)。
社長の芳村貞夫氏は三代目。
明治時代から横浜からシルク製品が多く輸出され、
芳村捺染もその時代にプリント事業を始めた。
それ以来、捺染一筋。
スクリーン捺染を中心に、スカーフ生地へのプリント、
そして縫製・仕上げまでを行っている。
※ スクリーン捺染=型染めのこと。
大きな枠に「紗(しゃ)」という粗い目の布を張り、そこに柄を焼き付ける。
染めたい生地の上にその枠を乗せ、その上から糊と混ぜられた染料を塗ると、
柄の焼き付けられていない個所のみ、染料が紗を通って下の布に付着する。
見せて頂いたのは、手捺染の一連の工程。
まず、お客様の希望の柄をスキャナーで読み取って、
使用してある色のデータを取り込む。
ここが唯一、コンピュータテクノロジーを使った工程。
コンピュータではじき出されたデータをもとに、
原色の染料(粉状)を分量通りに量り、混ぜ合わせ、
それを溶かして洗液とする。
すべて手作業。
ガスコンロの上で洗液を溶かしているところ。
洗液に糊剤を混ぜ合わせ、どろりとした洗液を作り、
寝かせる。
いよいよ染めの工程。
スクリーンをシルクの生地の上に置き、
そのの上に洗液を置いて、大きなへらで
上から下へ一気に塗る。
スカーフ一枚一枚、手で染めていく。
スクリーンを置いて、染料を塗り、
次の個所にスクリーンを置き直してまた上から下へ。
その間、約4~5秒。
身体全体を使って、動きはしなやかでリズミカル。
若い職人さんは力いっぱい、
そして先輩の職人さんは力まずスーッと。
どちらの動きも、いつまで見ていても見飽きない。
多色染めは、一度染めた柄の上にまた別のスクリーンを
寸分ずれないように置き、
別の色を乗せていく。
色数が多いほど熟練が必要になる。
職人になりたての頃は、一色のハンカチから始めるそうだ。
柄が大きい場合は、スクリーンも大きくなる。
そのため、二人、三人がかりで染めることになる。
息がぴったり合わなければならない。
染め終わった布は、この器具に巻きながらぶら下げられる。
そしてこの大きな蒸し器に入れられて、蒸される。
そうやって、染料が生地に定着する。
この後生地は羽前絹練に送られ、糊が抜かれ、
綺麗にプレスされる。
そして、また芳村捺染に戻り、裁断し、縫製されて、
やっとスカーフが出来上がる。
ここまで手作業が多いとは思わなかった。
そして、芳村さんでも若い職人さんが多く働いていた。
それも、女性の数が多かった。
みなきびきびと、生き生きと働いていた。
見ているこちらも楽しくなった。
出来上がったスカーフは、
まるで手作業とは思えない正確さで柄が染め抜かれている。
いや、手作業だからこそ正確なのかもしれない。
人間の五感をフルに使って、
そしてその感覚を体に叩き込んで
職人さんは機械よりも正確に生地を染めていた。
一体、蚕が糸を吐いてから、一人の消費者の手に製品が渡るまで
何人の職人さんの手を通るのだろうか。
こんなに一生懸命、丁寧に
そしてそれぞれの職人さんが一生かけて習得した技術を使って
つくられたストールやスカーフ。
私もデザインして売る側だが、
一消費者として、大切に大切に使わなければと、
改めて思う。
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今回の山形の旅では、一枚の製品が出来上がるまでの
数々の工程を見せて頂いた。
普段はなかなか見せて頂けないところを
みなさんのご厚意で、写真まで撮らせていただき、
そして、こうしてブログに公開することも快く承諾して下さった。
皆さんが異口同音におっしゃった。
「昔は見せなかったと思いますよ。
でも、いまはそんなこと言っている時代じゃない。
みなで技術を共有して、業界全体助け合って生き残らなきゃならない時代。
それにね、ちょっと見ただけで技術は盗めるものじゃないからね。
私たちも、自信ありますよ。」
今残っている工場さん、職人さんは、
世界一の技術を持っていると思う。
私はそれを誇りに思うし、
日本に生まれ育ったことを、素晴らしく幸運だと思う。
● 有限会社芳村捺染 http://ww5.et.tiki.ne.jp/~houson/yn/
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