頬を濡らす夜



2012年12月3日(月)

目に何かを入れるのは、嫌いだ。
ハードコンタクトレンズを初めて入れたときも、
目医者さんで一苦労した。
入れている時はいいのだが、
何かを入れる瞬間が怖い。

ドライアイで、パソコンを使っていると、目が痛くなる。
目薬を使えば問題ないのかもしれないが、
ドライアイを解消するための目薬が怖い。
だから、いつしかコンタクトレンズも使わなくなってしまった。

ところが、毎晩寝る前に目薬を注すはめになった。
それも左目だけ数か月。
薬の効果があるかどうか、
片方の目にだけ注して確かめるのだそうだ。

毎晩毎晩、目薬との格闘である。
一滴で眼球に命中することなど、まれである。
二滴、三滴はあたりまえ。
必死に左手で瞼をこじ開け、
右手で容器を押す。
どうも、右手の押し方が弱いようである。
左手が
「早くしてよ!」
と言っているのに、右手が
「うーん、怖い!」
と言って、及び腰なのである。
瞼のちょっと上に落としたり、ちょっと下だったり、
まるで関係ないところに垂らしてみたり。
「何やってるのよ。どこ見てるのよ!」
「うーん、だってぇ、怖い!」

待っている左目は、
自分がどこを見ているのが分からなくなっている。
早くして欲しいな~、と思いながらも、
右手が外し続けるのに、少しほっとしている。
でも、命中しなければ、事は終わらない。

五、六滴後、
左の頬がびっしょり濡れたころ、
ようやく目薬が「チッ」と目尻に入る。
左目は急いで瞬きして、全体に行き渡らせる。
もちろん、右目もお付き合いする。
はぁ~、やっと終わった。

頬を濡らす毎日。
そして悲しくなり、その後ほっとする。
順番は逆だが、それでイイのだ。(TT)





0 件のコメント: