2012年12月11日(火)
世田谷の三軒茶屋をおしゃれな町、
と聞いている人がいるかもしれないが、
三軒茶屋は、決しておしゃれな町ではない。
三軒茶屋は、活気のある商店街である。
若者が好むような小さな飲食店が、軒並み開店しているが、
手ごろな値段の、気安いお店ばかり。
駅近くは大規模店舗が集まっているが、
少し歩くと個人経営のお店も多い。
スリッパを買うために、近所の履物屋さんに入った。
日頃入ることのないお店。
きっと50年以上前から、このままの店舗で商売しているような
そんな佇まい。
下駄屋さんでもない、靴屋さんでもない。
履物屋さん。
そのお店は、三軒茶屋駅から自宅の道すがらにある。
お店の奥の暖簾の向こうは、きっと生活の空間。
私がお店に入り、声を掛けえると、
奥からおしゃれな髪型の女将さんが出てきた。
その愛想よく張りのある「いらっしゃいませ」に、
すこし驚きを感じたのは、
空気が動いていない古びた空間に、
今を生き生きと生きる女性が
急に出てきたからである。
私が、スリッパを選んでいる間に、
近所の女将さん仲間であろうか、
別の女性が出てきて
「また持って来るからね~」
「美味しかった。有難う!」
今まで、茶の間でおしゃべりしていたのか。
お店が無人になっても、
一向に気にする様子もない。
開けっ放しの、出しっぱなしのお店。
きっと暖簾の向こうには、平成が詰まっているに違いない。
パソコン、デジカメ、ブランドのバッグ、スマートフォン。
もしかしたら、女将さんの愛用品は、フェラガモかもしれない。
そして、暖簾のこちら側は、昭和30年か40年ぐらいの匂いがする。
きっと次の世代には受け継がれないお店。
もう数年すると、店を畳み、
新しくチェーン店が入ってきて、
お店を今風に建て替えるだろう。
おしゃれな町と言われるようになって、
何より変ってしまったのは、
そこに働く人たちは、よそから通ってくる人たち。
三軒茶屋は、いろいろな町から働きに来る町になってしまった。
どのお店も他の町と変わらない空気、匂いを纏い始める。
そういうのは、大きな街に任せておけばいいのではないか、
と思ってしまう。
三軒茶屋のような小さな町は、そこに住む人たちが商いを営む、
生活の匂いをぷんぷんさせる、
そんな町のままであってほしい。
駅からずっと続く商店には、
随分と住んでいる人たちが少なくなってきた。
この通りに残っている、数少ない似たようなお店。
魚屋さん、お味噌屋さん、洋品店、、、
お客さんが入っているところを見たことがない。
それでも、50年以上もお店が開いている。
その奥には、今を生きるお店の人の生活がある。
生活とお店がつながっている。
そういう形。
もうこれからは無くなってしまうのだろうな。
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