ダメージド・デニム



2012年12月27日(木)

またジーンズの膝が破れてしまった。
10年ぐらい前に買ったジーンズ。
とても高かったが、
当時、生地の営業をしていた私は、
そのニューヨークのブランドに生地を提案していた。
近い将来お客様になって下さるかもしれないブランドだ。
お客様のことを知るため、と自分に言い訳して、
その高いジーンズを東京のデパートで買った。

ストーンウォッシュなのか何ウォッシュなのか分からないが、
初めから生地にダメージをすごく掛けてあったのだろう。
履いて3年ぐらいで、最初にひざ下が、
次にお尻のポケットの下が破れた。
お尻のポケットの下がパックリ割れているのでは、
そのまま履けない。
だから、しばらく放置してあった。

当時ニューヨークに住んでいた姉に、そのブランドのことをメールで話した。
すると、彼女からの返信に、
「あなたの営業をかけているジーンズの会社は、
ニューヨークの○○ストリート、××番地にあります。
その同じビルの4階には、アナタも知っている
すごい美人が住んでいます」
とあった。

『すごい美人』のところは無視して、
「今度ニューヨークに行ったときに、ぜひ私のジーンズを修理してもらいたい」
と書いてみた。

姉からの返信がすぐにあり、
「1階の店員さんに話したら、いつでも修理しますよ、と言ってくれました。」

そして、その冬だったか、都合よくニューヨークに行く用事ができ、
その『すごい美人』の姉に仲介してもらって、ジーンズを修理してもらった。
残念ながら、仕事の方は生地の値段が高すぎて、販売することができなかったが、
ジーンズを直してもらったことで、
私はそのブランドが好きになった。

東京に帰り、再び気分よくそのジーンズを履いた。
履きやすいので、着用頻度は高かったと思う。
そうするうちに、今度は右の腿のあたりがぱっくりと割れた。
ちょっと穴が開いた程度ではない。
提灯お化けのように、みごとにぱっくり開いている。
寒いし、肌がやけに見えるので、
また放置することになった。

そして、今年の春、実家の近所にお直し屋さんができたので、
そこで右膝のぱっくりを修理してもらった。

ジーンズのひどいやぶれには、内側からやはりデニム地の生地を貼り、
ミシンを沢山かけて密着させる。
だから、その部分は、とても厚く、丈夫になる。

3年ぶりぐらいに、またそのジーンズを履けることになった。
修理の箇所が増え、貫禄が出てきた。

一週間ほど前、食事中に、左の腿のあたりが薄くなっていて、
そこをいじっていたら、穴が開いてしまった。
食事の度に、なぜかそこをいじりながら遊んでいたら、
二日前に、また提灯お化けになってしまった。

ジーンズは、再び放置されている。
また近いうちに、同じお直し屋さんに持っていくつもりだ。
裏返したらつぎはぎだらけのジーンズ。
でも、修理の度に、愛着が増している気がする。

10年前のジーンズは、ダメージをすごく与えてあるのが流行っていた。
だから、最初から生地がとても痛んでいたのだ。
今度なおしても、またしばらくしたら他の部分が破れるのだろう。
次は、どこだろうか。
もう、今から当て布をしてもらっておこうか。

このジーンズをいつまで履くのだろうか。
最初の生地がベルト部分以外全部なくなって、
当て布しか残っていない、
なんていう状態になったら、面白い。
その頃には、私は背中の丸まったお婆さんになっているかもしれない。
「もとは格好いいジーンズだった」と主張してやまない
つぎはぎだらけのズボンを履いた、背中の丸いお婆さん。
うーん。
ちょっと。。。考えてみよう。





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