色白



2013年5月25日(土)

東京は、いよいよ日差しが強くなってきた。
一年で紫外線が一番強い季節だという。
そう聞くと、外を歩いている時、紫外線が顔を刺してくるような気がする。

SPF50+
PA++++

なんだか良く分からないが、紫外線を防止する最高の数値だということで、
ドラッグストアでこういう数字の書いてあるクリームを買ってみたりする。

この歳になったので、もう告白してもいいだろう。
私は、色白だ。
いや、正確には、色白の子どもとして生まれた。
ン十年も生きているので、もはや一目で色白とは判別できなくなったが、
子供の頃は会う人ごとに
「まあ、色が白いわね~。」
もとい。
「わぁ、色白やンね~」と言われた。
小学校の時のあだ名は、「しろぶた」。
同級生の男子が付けたあだ名た。
女の子にも、
「色白いんねぇ」と言われる。
そして、
「色の白いは七難隠すって言うえんよ。いいわんねぇ」と続く。
(石川県小松市地方は、何かと「ん」が入る。)

これを聞くと、小学生だった私は
(小学生のくせに、オバサン臭い)と思った。
【色の白いは、七難隠す】
多分親たちが使う言い回しを覚えたのだろう。
小学生はまだ社会性が発達していないので、
覚えた言葉が小学生にふさわしいかどうか、判断しない。
得意になって使う。
大人びた言葉を使って格好良い場合と、
それを飛び越えて、オジサン、オバサン臭くなる危険があることを、
分からない小学生が多いことを、
小学生の私は知っていた。

「色の白いは、、、」は、オバサン臭い言い回しに入っている。
今思っても、そう思う。
いや、大人になった私が使うもの憚られる。
いつになっても、オバサン臭い言いまわしだ。


私は特に体育の授業が嫌だった。
運動音痴であるのもその理由だが、
ブルマーを履くのがいやだったのだ。
かならず、「あし、しろい~!」とどこからか大きな声が聞こえた。
そうすると、みんなが私の二本の大根に注目する。
そして、誰かしらがぽそりと
「色の白いは、七難隠す」と続ける。

わかりました。わかりましたよ。
白いです。
七難隠してます。
隠しきれているかどうかわかりませんが、隠しています。
白いと、脚は太く見えます。
太いのが余計太く見えます。
これは、隠せていません。
だから、このほかに七難あるのです。

幼いころから、私はこの七難がいつか表に出てくるのだと、
覚悟をしていた。

もし7つしか難がない人だったら、
難がすべて隠れているのだから、完璧だ。

10個ある人は、3つが表に出ている。
3つくらいだったら、十分に美人だろう。

難が50個もある人だったらどうだろう。
たった7つ隠れたところで、あまり色白の恩恵に浴していないかもしれない。
でも、難が50個もある人なんて、そうそういない。

さて、難が14個の人はどうだろう。
7つ隠れているので、表出しているのは残り7つだ。
難が7つ見えているというのは、美人なんだろうかどうなんだろうか。
うーん、あまり期待はできない。
でも、14個ぐらいだったら、ある人は多いのではないだろうか。

自分の難がいくつあるかなんて、考えたことはない。
考えたくない。数えたくない。
でも、数えたら、14ぐらいすぐに超える気もする。
数えない、数えない。


小麦色の肌に憧れて、私は年ごろになった時に日焼けに挑戦した。
でも、惨敗だった。
ベランダで塩の入った水を霧吹きに入れて、
脚に振り掛けて、焼いてみた。
太陽にあざ笑われるように、ただ白く塩が吹いただけだった。
赤くもならなかった。

友達と伊豆の民宿に泊まりがけで行って、
海岸に何時間もいいてやけどをして、そして高熱を出して寝込んだ。
海で風疹をもらってきたのだ。
肌は黒くならずに、たくさんの水疱ができた。

それっきり、焼くのは諦めた。
しかし、そんな努力をしなくても、
何十年とたつうちに、ちゃんと「幼いころは色白だった」オバサンになってくるのだ。
『しろぶた』と呼ばれたころが懐かしい。

ふと気づく。
とすると。。。
理屈から言えば、すでに七難のうちの半分以上は表出しているはずだ。
あな恐ろしや。
それが、どれと、どれと、どれか、なんて、
数えない、数えない。

そして、まだかろうじて隠れている(と信じたい)数個の難が表に出ないように
私はSPF50+・PA++++の化粧下地クリームを買う。
外出する前に、これをたっぷり塗ってからパウダーを塗る。

「うわぁ、能面のようだ」と思いながらも、構わず塗る。
もはや、誰のために色白であろうとし、
誰のためにお化粧をしているのか分からない。
ただただ、隠れている(と信じたい)数個の難のために、
私は高いお金を出して、日焼け止めを買うのだ。

子供の前で「色の白いは、、、」というフレーズは禁句です。
教えてはいけません。
もし覚えてしまった子供がいたら、
「その七難は、良いことを100個するたびに、一つずつ消える」と
教えてください。
色が白くてもそうじゃなくても、
ヒトのクオリティは、色では決まらないと。

あ、それから、日焼け止めはたっぷり塗っても安心できません。
何度もこまめに塗らないと効果がないそうですよ。
ずぼらではだめだそうです。
ここにも、クリアしなければならない課題があったか。




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