時計の音



2013年5月17日(金)

自宅や自室の時計の音は、聞こえるものなのだろうか。

私の自室の掛け時計とは、付き合いが一年になる。
単三の電池一つで動く、ごくシンプルな時計だ。
秒針がないのに、チックンチックンと音がする。
自分で購入したのではなく、
転がり込んだ実家の和室にあったものを、そのまま使っている。

もし私がお店で選ぶとしたら、
音がしないものを選ぶ。
このチックンチックンが気になってしまうからだ。
うるさ~い!というほどでもないが、
なんとなく、耳障りだ。
音がない方が静かでいい。
時計は、今も私の頭の上で、きっちりと音を刻んでいる。

しかし、台所に掛かっている柱時計は、
音がしない。
こちらの時計は、我が家に50年以上あるらしい。
ゼンマイ式の、旧い振り子の時計だ。
大体一か月もすると、ゼンマイが伸びきって、時計は止まる。
その度に、椅子に上って時計の全面の扉を開き、ゼンマイを巻き直す。
そして、短針長針をその時の時刻に合す。

昔の時計だから、振り子が振れる度に大きな音がしているはずだ。
だが、私には聞こえない。
私の耳が悪いわけではない。
耳の感度は普通だと思う。
だけれど、この時計の音だけは、聞こえてこないのだ。
音はしている、という、。

ただ、時折、ふっと耳のモードが切り替わった時に、
確かにカッチンカッチンと、その振り子時計から音が聞こえる。

「あ、聞こえた!」
「こんなに大きな音がしているんだ。」

と思うのも束の間、また耳は普段のモードに戻り、
音はどこかにスーッと消えてしまう。

幼いころからずっと一緒に過ごしてきた音だからなのだろうか。
心臓の鼓動が聞こえないように、
台所の柱時計の音も、私には聞こえない。
15年間、この家を離れていたが、
やはり戻ってみると、音は聞こえない。
不思議なことだ。


頭上で鳴っているこの時計も、
そのうち聞こえなくなるのだろうか。

いや、残念ながら、検証はできない。
その頃には、「耳が、トオクなったから、でしょう?」と
耳元で大声で叫ばれるに違いない。






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