半身浴



2013年5月19日(日)

父のお蔭で、我が家のお風呂がこの2月から新しくなった。
父が入りやすくするための改装だったが、
一番使っているのは、私ではないだろうか。

父が使いやすいようにと選んだので、
浴槽が浅い。
昨今のホテルと同じぐらい浅い。

半身浴が体に良いと言われ出してから、
もう随分になる。
最初は美容のためと、女性雑誌が取り上げたように記憶している。
今では、健康のためにどんな年齢の人も、
男性も女性も半身浴が勧められる。
私は浅い浴槽に、更に浅くお湯を張って、
長くゆっくり浸かる。
それでも、のぼせてしまいそうになる。

子供も最近は半身浴なのだろうか。
私が幼かった頃、
お風呂には肩まで浸からなければならなかった。
十分に体が温まるためには、
肩までどっぷりと浸かって、じっとしているのが一番と信じられていた。

子供は長湯が苦手だ。
それも、お湯が熱ければなおさらだ。
それで、親は子供に「100数えるまで肩まで浸かって」などと言う。
「いーち、に、さーん、し、、、、、」
最後の方は熱くて早く出たいから、
「きゅうじゅいちきゅうじゅにきゅうじゅさんきゅうじゅし、、、」
息継ぎなしで最後まで突っ走る。
余計のぼせてしまう気がする。
幼い子は、お風呂で一から百までは言えるようになる。

我が家はちょっと違った。
【十人のインディアン】を十回歌わせられたのだ。
「ひーとり、ふーたり、さんにんいるよ、、、」というあの歌だ。
あれを、しかも英語で教えられた。


One little, two little, three little Indians
Four little, five little, six little Indians
Seven little, eight little, nine little Indians
Ten little Indian boys.

おそらく父が教えてくれたのだろう。
発音はまったくもってカタカナ英語なのだが、
なぜか
「ワンリル、ツーリル、スリーリルインディアン、、、」
ツーもスリーも完全にカタカナ発音なのに、
リトルだけが英語っぽく「リル」と歌った。
父は一緒にお風呂に入ると、
「肩まで浸かって、ワンリル、ツーリルを歌え」と言った。
彼はどこでどのようにこの歌を覚えたのだろう。

私は大きくなって一人でお風呂に入るようになっても、
よくこの歌を歌った。
そして、随分経って、ある時気が付いた。

「ワンリル、ツーリル、スリーリルインディアン」じゃないのだろうか。
学校で英語を習い、ツーやスリーの正しい発音を習って、
自分では父よりよっぽど上手に歌っている気になっていた。
でも、とても基本的な複数形が抜けている。

それに気が付いてからは、私はちゃんと「インディアンズ」と複数形にして
歌っている。

この歌には二番目があって、
十人いたインディアンの男の子たちが、一人、二人と抜けていく。


Ten little, nine little, eight little Indians
Seven little, six little, five little Indians
Four little, three little, two little Indians
One little Indian boy.

最後は一人になったインディアンの男の子は、
ちゃんと「boy」と単数になっている。
私は一番しか歌わないので、そこまで気にしなかったが、
やはり昔の歌は、文法はちゃんとしているのである。

で、またまた気が付いてしまったが、
最近アメリカでは『インディアン』という呼称について、様々な意見が飛び交っており
『インディアン』を使わずに『ネイティブ・アメリカン』(アメリカ先住民)という
呼び名を使う人が多くなってきたらしい。

とすると、この歌も歌ってはいけないのだろうか。
それとも、新しい言葉に置き換えれば歌っても良いのだろうか。

ワンリル、ツーリル、スリーリルネイティブアメリカンズ、
フォーリル、ファイブリル、シックリルネイティブアメリカンズ、
セブンリル、エイリル(「エイト」も「エイ」と教わった)
ナインリルネイティブアメリカンズ、
テンリルネイティブアメリカンボーイズ。

ふー。ややこしい。
これを十回繰り返して、お風呂のたびに歌えば、
英語の早口言葉も言えるようになるだろうか。
その前に、のぼせてしまう。
私はもう大人なのだから、お風呂は半身浴に限る。








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