おろしわさびのパッケージ



2012年10月9日(火)

新しくおろしわさびのチューブを買った。

ん?
見ると、箱に切り取り用の点線が2つ付いている。
なぜ?
この点線に沿って切ると、箱はどうなるのだろう。

箱にイラストがある。
この通りに切って、一部をへこませると、
箱がチューブ立てになるという。
冷蔵庫の中でバランスを失いがちなチューブだが、
この箱に入れたまま保存すれば、
倒れることがない、ということだ。


我が家もそうであるし、おそらくほとんどの家もそうだと思うが、
チューブ立ては、すでになんらかの形で作ってある。
わさびや和がらしは、常備品。
生姜やニンニクもチューブで備えている家も多いと思う。
それらがグシャグシャ倒れないように、
何かの容器にまとめて入れているだろう。

あれ?
そもそも、おろしわさびって、冷蔵庫に保存するものだっけ?
こういう類のものや、マヨネーズって、
スーパーでは常温の棚に置いてある。
開封したら、冷蔵保存?
それとも、皆さん常温で保存しているの?
それすらも、私は知らない。
家事的な物に、私は疎い。
ごめんなさい。

それは脇に置いて。

おろしわさびの会社の企画の人たちは、
チューブ一本だけが入る箱があれば、冷蔵庫(など)の整理に便利だ。
それが競争力になる、と考えたのだろう。

この箱が便利かどうかは、各家庭の事情や個人の好みによるため、
ここで判断するつもりも、すべきこととも思わない。
私が興味があるのは、『サービス』の在り方についてだ。

大量に生産している商品だから、
パッケージのデザインを変えるにしても、
多くの無駄が出る。
でも、それを見込んでも、
なお利益増につながるという判断があり、
このパッケージは企画会議を通り、いくつものお偉いさんのハンコが押されて、
このようにお店に並ぶことになったのだろう。

この切り込み線を増やし、イラストを入れる、ということで、
確実にコストは上がるはずだ。
商品の単価を上げずにパッケージを改良するということは、
どこかでその上がったコスト分を下げなければならない。
パッケージの印刷につかうインクの種類を少なくする。
パッケージの紙質を下げる。
もしかしたら、チューブの材質を下げる。
一番考えたくないが、
わさび自体の原料の質を下げる、または減量する。

接客という人の言葉や態度を通した販売をしない、
大量生産のこういった商品は、
無言でサービスをお客様に伝えなければならない。
商品自体の質や見え方でサービスを提供しなければならない。
その場合、あらゆるサービスは、すべてコストに換算される。
企画者が、「こうしたら便利だな」「こうしたらかわいいな」と思っても、
それをすぐに実現するわけにはいかない。

その変更や改良によって、
現製品にかかるコストより多くかかってはいけないし、
その分どこかを削らなければならない。
また削るのではなく、そのまま製品の単価を上げるのなら、
新パッケージとして発表し、
何らかの広告やキャンペーンを張らなければならない。

サービスをコスト換算しなければならない商品は、
大変なのだ。
「こうだったらいいのな」というちょっとしたアイディアがあっても、
なかなか実現しにくいのだ。
反対に、それでもその改良が絶対にいい、という確信があれば、
社内でそのアイディアはずんずん登っていき、
スピードを持って実現化される。
それには、開発者の強い信念とまわりのサポートが必要だ。

振り返って、私の仕事。
私の社内には、私しかいない。
アイディアを出すのも、経費計算するのも、
ハンコを押すのも、業者さんに発注するのも、
全部私である。
すべて、一日あればできる。
そして、おろしわさびとの大きな違いは、
私は接客ができる。
私の言葉や態度で、サイズや種類を制限することなしに
サービスが提供できる。
それは、コストに反映しない種類のサービスを多く作ることができるということだ。

もちろん一人しかいないので、無制限というわけにはいかないが、
どんなことも、アイディア次第でサービスにすることができるだろう。

私は自分の仕事に、大量に生産するものを選ばなかった。
生産は少量でも質を良くし、接客をして販売するものを選んだ。
それは、言葉や態度でいくらでも高められるサービスをしたかったからだ。

harukiiの商品の販売が、来月から始まる。
どんなお客様に、どのように商品が届いていくのか、
今からとても楽しみにしている。
そして、お客様からどんなリクエストがあり、
私がどこまでそれにお応えすることができるか、
想像しながら、ちょっと武者震いをしている。

おろしわさびのパッケージを見て、
いろいろ考えた、秋のひと時であった。






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