氷室饅頭 Ⅰ



2012年7月1日(日)

石川県に住む方から、昨日
氷室饅頭(ひむろまんじゅう)が送られてきた。
毎年この日に送って下さる。

7月1日は、金沢では「文月朔日(ふみづきついたち)」と表し、
氷室饅頭を食べる日である。

氷室というのは、冬の間に氷や雪を貯蔵しておく室のこと。
地中や山かげに穴をあけて、そこに氷や雪を詰め、茅などで覆った。
昔の冷凍庫である。
今でも金沢の兼六園に、その跡が残されている。

もちろん、暑くなるにつれて雪や氷はどんどん溶けていっただろうから、
夏に食べる氷は、どれほど贅沢品だったことか。

江戸時代、加賀の前田のお殿様は、7月1日(旧暦では6月1日)に
毎年、氷室の雪氷を江戸幕府に献上していた。

氷室饅頭は、5代藩主・前田綱紀(まえだつなのり)の時代に、
あるお菓子屋さんが、考案したもので、
幕府への献上が息災になされるように、道中の無事を祈って食された。

元来饅頭(万頭)は、万(よろず)の頭(かしら)となるように、
との願いを込めた菓子であり、
冬の間、雪に耐え強く成長する「麦」を使った菓子は
無病息災を祈願するもの。
それにより、この日、庶民もこの麦饅頭をこぞって食べるようになったそうである。

送られてきたのは、柴舟小出(しばふねこいで)のもの。
色は白、紅(ピンク)、青(若草色)の三色。
かごに行儀よく入っている。

金沢では、ほとんどの人が今日このお饅頭をたべるそうである。
また、実家から娘の嫁入り先に、このお饅頭とともに
ちくわ、杏、煎り菓子を添えて贈る風習が残っているそうである。

日本各地にいろいろな風習が残っているけれど、
加賀の風習は、お金持ちのお殿様のおかげで、
まつわるストーリーが、なんだかとても贅沢だ。

うちは嫁入り先でもないのに、毎年送って下さる。
有難いことだ。
この可愛いお饅頭を見ながら
江戸時代、氷を運んで走った馬や人の苦労に
ひととき、想いを馳せる。

● 柴舟小出のウェブサイトはこちら >>>>> ただし、お仕事中の方はクリック前に気を付けて!お謡いの声が朗々と流れてきます。



0 件のコメント: