2013春夏 色を選ぶ #1



2012年5月26日(土)

色を選んでいる。
世の中の膨大な色の中から、
「コレでなければ!」といった色を探す作業である。

あぁ、色、色、色。
色に惑わされ、色に酔い、色にひれ伏す。

などとメランコリックに呟いてみたところで、作業は止まったままである。

ストール作りの最優先事項は、その肌触りと決めている。
春夏物なら、新春から早春、梅雨、初夏、盛夏と
防寒から日よけ、冷房対策まで、ストールの出番は案外多い。
ストールはファッションアイテムだけれど、
本来は道具である。
巻き心地が命の商品なのだ。

来年の春夏用に現在考えているストールは、全部で7種類。
それぞれの季節を思い出しながら、素材や質感、サイズを決める。
工場さんからお借りしたサンプルを、実際に巻いて数日間過ごし、
肌に優しいか、温かいか、爽やかか、
長時間巻いているのが苦痛にならないかを、検証する。
80代の両親の首も借りる。
猫の首も借りる。(もし飼っていたら、だが。)

この検証をクリアした7種類のストールには、
より肌触りが良いように、使い勝手が良いように、また季節感が出るように、
細かな修正が加えられる。
素材の種類、糸の太さ(細さ)、織り方、織の密度、全体のサイズなど。

そして、最後にいよいよ色と柄が決められて、harukii用サンプル作製の段階に入る。

最重要事項ではないものの、
その素材や質感の魅力を最大限に引き出すのは、
色の大きな仕事である。
決めるのにも、慎重かつ真剣である。
糸帳の色見本を参考に、ああでもない、こうでもないと。

気が付くと何時間も経っている。

harukiiの2013年春夏には、ブルー、グリーン、ピンクの3色を考えている。
それぞれのストールによって、合う色、合わない色が微妙に違ってくる。
例えばこっちは甘い感じのブルーが合うけれど、
別のになると、もっと渋いブルーが合う、とか。
もちろん、その合う合わない、という判断は、全く私の個人的な感覚。
好みと言い換えられる。

好みはもうあんまりブレない歳になった。
ずいぶん楽になった。
しかし、それでもだ。
朝と夜とでは違ってくる。
晴れと雨でも違ってくる。
昨日「コレだ!」と思った色が、
今日は「ホントに私でいいんですかぁ?」と問いかけてくる。
「そうねぇ、ちょっと違ったもしれないわねぇ。隣の色にしてみようかしら。」
こう悩みだしたら、もう大変。
何時間あっても決まらない。

若いころの私だったら、こういう時は粘りに粘った。
そしてどんどん意固地になった。
何に対して、というのは不明のまま。
全く無意味なガンコちゃんである。

でもこの歳になると、ちゃーんと方便を見つけている。
「色の神さまに任す」

私の中には、色の神さまが住んでいる。
最初は私に迷いに迷わせて、
頃合を見計らって、登場する。
直感、という形で色神さまは杖を振るい、色を決める。
私の脳みそが判断できなくても、その色神さまは正しい色を選んでいるはず。
そう思えば、もう不安に思わない。

色神さまが思う存分力を発揮するために、私が協力できること。
それは、睡眠をたっぷり取ること。
さぁ、今日はもう遅い。
明日の朝は早く起きて、最初に「コレ」と思った色を
工場さんに伝えよう。


2013春夏 色を選ぶ #2

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