春が来た。

2014年3月25日（火）

ダンダンダンダンッ！

ガッガッガッガッガッガッ！

ガッ！

高い踵の太いヒールの音を踏み鳴らして、
私の少し前を茶色の長い髪が流れていった。

♪ 閉まるドアにお気をつけ下さい。

その先に目をやると、

ベージュの軽やかなコートの下からスンナリと伸びた
ミニスカートの左脚の膝から下が、
電車の二枚のドアの間にしっかりと食い込んでいる。

茶色のロングヘアは、きれいにカールがかかっている。
コートの両肩は少し盛り上がり、
両手はドアに掛かっている。

彼女は動かない。

電車のドアも動かない。

周りの人々も止まったまま。

しばらくの静止画。

その後、電車がゆっくりと動き出した。
彼女は多分、中に入れてもらったのだと思う。
私も人も、それを見届ける前に歩き出した。

多分、社内のアナウンスは言っている。

「無理なご乗車はおやめ下さい～。」

彼女は、何もなかったかのように、
長い髪に指を絡めて、
スマートフォンを眺めているに違いない。

春が来た。