2017年4月4日(火)
去年の秋、
写真家の叔父が患って入院しているところへ
母と見舞いに行った。
久しぶりに会う叔父は
病疲れをしているように見えた。
もう数か月入院している。
自宅には戻りたがらないとも聞いている。
そうか。
ここの方が良いのかもしれない。
二年前、このブログで叔父の写真展のことを紹介した時、
実は叔父の妻、つまり私の叔母は
そのひと月前に急逝していた。
3月の写真展の会場を予約し、
招待状を送り、
様々な細かい準備を済ませ、
2月のある日に、
誰にもその予感さえさせずに
叔母は逝ってしまった。
それから1年以上、
身の回りの世話を実の妹さんにしてもらいながらも、
叔父は叔母と暮らした家に一人で住んでいた。
冨岡の叔父は妻の葬儀で
「わしには写真があるから、
まだやることがあるから」と皆に話した。
参列した私たちは、
そうあってほしいと願いながら、
叔父の挨拶を聞いていた。
そして、叔父はその言葉の通り、
写真のことを一生懸命やって元気に過ごしていた。
私たちにはそう思えた。
写真があって良かったと
皆心の底から思っていた。
その次の春の写真展も、そして今年の写真展まで、
叔母が会場の予約を済ませていた。
二人の大好きな『石川国際交流サロン』。
この古い民家を利用した建物で、
春に写真展をするのが恒例になっていた。
昨年の秋、訪れた病室には、
ネガを見るライトボックス、
大きなレンズがあり、
その横には大量のネガや山と積まれていた。
叔父は入院してからも
写真三昧の毎日だったと聞く。
自分の写真展に出す写真を選び、
入院している病院に寄付する写真を選び、
そして、、、
病室には大きなテレビがあり、
そこには美しい夕日の画像が映し出されていた。
それを、叔父は横になったままじっと見つめていた。
ああいう美しい景色を、
これまでどれぐらい見てきたのだろう。
叔母と二人で。
叔父が小さな声で聞く。
「お父さん、いくつや。」
えっと。。。
叔父は父が亡くなったことがわからなくなったのか。
いや、そうではないとすぐに気が付いた。
「お父さん、いくつで亡くなったんや。」
そう聞いたのだろう。
「86。」
私はすぐに言葉を繋いだ。
「あの、Kおばちゃんは90歳過ぎたんだって。
すごいね。」
その後、会話は続かなかった。
叔父は86。
もうすぐ87になる。
その次に見舞いに行ったときは、
もうほとんど会話が出来なかったが、
それでも叔父の手を握ったら、
力強く握り返してくれた。
叔父との会話はそれが最後だった。
人生を全うした。
そう思える生き方だったと思う。
そして、最後の方に撮った写真は、
どんどんシンプルになっていった。
叔父はすべてを準備して、
満足して逝ったのだと思う。
******
◆冨岡省三の眼 遺作写真展
2017年4月4日(火)~9日(日)
10:00~18:00 (金曜・土曜は20:00、最終日は17:00まで)
石川国際交流サロン
920-0962 金沢市広阪1-8-14 TEL 072-223-8696
お時間ありましたら、ぜひ足をお運びください。
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