泣くことの効用



2016年2月3日(水)


「なぐごはいねが~!」 
「なぐごはいねが~!」

な、なんですか。 あなた、いったいなんですか。

「なぐごはいねが~!」
「なぐごはいねが~!」

泣く子なんていませんよ。
うちには子供はおりません。
泣く人間もおりません。

「泣がねのか?」

泣きません!

「ほんとに泣がねのか?」

泣きませんよ。
なんで泣くんですか?

「泣がねのか。泣ぐのはいいぞ。」

えぇ?

「泣ぐことの効用って、しってっか?」

泣くことの効用?

「泣ぐと血液中のACTH、つまり副腎皮質刺激ホルモンが減るんだ。」

はぁ?

「このACTHはストレスホルモンとも言われてな。」

はぁ。

「泣ぐと涙と一緒にストレスが外に出ていぐんだと。」

はぁ。

「泣がねのか?」

うーん、まあ、そうですねぇ。
あ、あくび!
あくびで泣きますよ。
あくびするときは、だらだらと涙が出ます。

「そうか。泣くか。」
「んだら、なくごはいねか~。」

ちょっとあなたねぇ、赤鬼さんでしょ?

「ん?」

赤鬼さんでしょ?
何をなまはげの真似してるんですか。

「あれ? ばれちゃった?」

ばれちゃったもなにも、今日は節分でしょ?
だから出てきたんでしょ?

「そうです。」

なまはげの真似しちゃダメでしょ。

「そう、、、ですか。」

そうですよ。だめですよ。

「寒くてねぇ。」

えぇ?

「ほら、裸でしょ?
 もう寒くて寒くて。
 寒いのに、豆ぶつけられて、外行けそと行けって追い出されて。。。」

、、、、。

「なまはげさんたちは、あったかい家庭に招き入れられて、
 うらやましいなぁと、常々思っていたんですよ。」

はぁ。なるほど。
そういえば、そうねぇ。それはつらいわよねぇ。
私も寒がりだから。
あ、もうちょっとこっちへ来ます?
ストーブ、買い替えたばかりなんですよ。
あったかいですよ~。

「え? いいですか? ありがとうございますっ!」
「はぁぁぁぁ。 あったかい~~。」

もっともっとこっちへ。ここへ座って。

「はぁぁぁぁ。すみません。もう冷え切っちゃって。」
「あ、これ、もしかして。」

え?

「これ、もしかして、おいしいおいしいお米のジュース。」

あ、赤鬼さん、その赤ら顔はもしかすると。

「えへへ。」

イケる口ですね?

「はぁ。目がなくて。」

どうぞ。いいですよ。
いっぱいやっていって下さい。あったまりますよ。

「んまい!」

純米吟醸です。
大吟醸じゃないけど、すっきりしておいしいですよ。

「んー! うまい!
 すっきりしてますね~。 新潟ですか?」

ええ。わかります?

「わかりますよ。新潟の酒ですよ。」

もういっぱいどうぞ。

「すいません。
 いやぁ、あったまりますね~。
 もう、いつも寒くて寒くて。
 仕事だから出てこなくちゃいけないですけどね。」

へぇ、どこから?

「鬼が島ですよ。鬼がうじゃうじゃいますよ。
 ボクは仲間の中でも、とりわけ寒がりで。
 総務にダウンの肉襦袢つくってくれって頼んでるんですけど。
 だめだって。
 肉体美が売りなんだから、裸じゃないとだめだって。」

「そもそも鬼になんて生まれたくなかったですよ。
 嫌われるし、寒いし。」

あれ? 赤鬼さん、絡み酒?

「絡みたくもなりますよ。
 なんで大寒のあたりが節分何ですか。
 一年で一番寒いじゃないですか。
 南半球で生まれたかったですよ。
 ハワイでもいいですけどね。」

、、、、、。

「今年は世田谷一円に行けって。
 東京も十分寒いですよ。
 こないだは沖縄にも雪が降ったっていうじゃないですか。
 もう、どうかしてますよ。」

そうですねぇ。赤鬼さんも、大変ですねぇ。

「わかってもらえます?
 わかってもらえますぅ?
 およよよよ。。。」

あれ、こんどは泣き上戸?

「だって、優しいことばなんてひさしぶりですもん。
 もう泣けて来て泣けて来て。」

ちょっとちょっと。

「お~ん、お~ん。」

もう、赤鬼さん!

「お~ん、お~ん。」

もう、赤鬼さん!
なぐごはいねがー!

「あれ?」

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その後赤鬼さんは、福豆ならぬミックスナッツをお土産にもらい、
すっきりした顔をして町の中へ戻っていきました。
めでたし、めでたし。

お。し。ま。い。

※方言監修はしてございません。あしからず。


 

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