発止



2013年4月14日(日)

車の後部座席に乗っていた。
携帯電話を覗いていた時、急ブレーキがかかった。
隣の座席に置いてあったバッグが、
その衝動でするっと下に落ちそうになった。
その瞬間、私の右手がバッグを『ハッシ』と抑えた。
バッグは、シートの角ぎりぎりで止まり、
下には落ちなかった。

音も出さず、声も出さず、
運転手も気が付かず、
ほんの一瞬の出来事。
だけれど、私の頭の中では、確かに音がした。
『ハッシ』。
緩の中の一瞬の急。
誰も証言も評価もしてくれない、その俊敏性。

まったく取るに足りない、なんでもない出来事なのだけれども、
自分で自分をほめでやりたい気になった。
そして、頭の中で鳴った『ハッシ』という言葉が、とても気になった。

調べてみると、当て字で『発止』と書くらしい。
もとは擬音語で、剣など固いものが打ち合う音からきたらしい。
本当だろうか。
私は、瞬時に『ハッ』という気合いを入れるから、だと思う。
私もバッグを抑えたとき、もし声が出ていたら、
きっと『ハッ』と言っていたと思う。

いずれにしろ、私の生活の中で、
めったに『発止』と何かをすることはない。
だから、バッグを下に落とさなかったその一瞬のできごとが、
いつまでも私の中に鮮明に残っている。

次に発止と何かをするのは、いつのどんなときだろう。





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