体育の思い出



2012年10月8日(月)

今日は体育の日。
私が子供の頃は、10月10日が体育の日だった。

体育、体操に楽しい思い出はあまりない。
運動音痴で、鈍足で、
痛いことが嫌いで、競争心がない。
『負けず嫌い』という言葉に反抗して、
密かに自分を『マケズスキー』と呼んでいた。

それでも、体育、体操にまつわる思い出はいくつかある。
一番気に入っている思い出は、
確か小学校3~4年生の頃。

私の小学校では、なぜか『視聴覚室』という
8ミリ映画などを見る部屋が、
時々体育の時間に使われていた。

お昼前の時間だったと思う。
窓から日が燦々と差して、明るい日だった。
季節は今頃か。


その日は、馬跳びだった。
跳び箱は一段も飛べたことはないが、
これは、なぜかできた。

身体の大きな子を飛ぶのは大変だったが、
ちょっと屈んでもらって、かろうじて飛べた。
だから、他の体育の時間よりも、平和な気持ちでいた。

他の子が飛んでいる間、
いつものようにぼーっとしていた。
そうしたら、なぜかお粥が無性に食べたくなった。
白い、湯気の出ている、熱々のお粥。
ちょっとお米が溶けているような、とろとろのお粥。
これに付け合わせるのは、
その時はどうしても奈良漬の瓜だった。
甘辛くて、パリパリした奈良漬の瓜の薄く切ったのを、
熱いとろとろのお粥に乗せて、そーっとすすりながら食べる。
もう、どうしてもそれが食べたくて食べたくてしょうがなくなった。


ただ、それだけの思い出である。
それから、教室を駆け出し、一目散に家に戻って、
母に「お粥作って!」、と叫んだわけではない。
お粥も奈良漬も、大好物というわけではない。
何が何を刺激したのか全くわからないが、
小学生の女の子が、体育の時間中に白いお粥と奈良漬を思い浮かべ、
ぼーっとしていたのだ。

また順番が来たので、級友の丸めた背中を飛び、
ちょっと体格の良い子の背は、ポンポンと叩いて縮まれと合図を送り、
その日の記憶は、そこで止まった。

本当に、ただそれだけの思い出なのに、
なぜこんなに鮮明に、40年以上も覚えているのだろうか。
思い出というにはあまりに刹那的で、
まったくどういうことのない一瞬の記憶だけれど、
私はなぜか気に入っている。
白いお粥と黄色い奈良漬。
そして、窓から燦々と入る日差し。
平和な小学生のあるひとときを、
今でも時々思い出す。

今日もちょうどそんな日差しだ。
お昼にお粥と奈良漬、食べたくなってきた。

ナディア・コマネチ by eye2eye



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