15年間



2012年10月6日(土)

15年以上も前、引越しをしたことがあった。
その時に、『引っ越しました』カードを友人知人に送ろうと思ったのだろう。
今年の引越しで、その時に用意した未使用のカードが
どっさり出てきた。

『引っ越しました』というスタンプを、カラフルなインクで押してある。
様々な色を使って。
いろいろな向きで。
多色づかいもある。
新住所も貼ってある。

それが大量に残っているということは、
私は引越しをほとんど誰にも知らさなかったということか。
知らさなかったのではなく、
宛名やメッセージを書くのが面倒くさくて、
単に出さなかっただけだと思う。
スタンプを押すところで、満足してしまったのだろう。
結局おそらく、メールでお知らせしたのだと思う。
そのカードは15年間、引出の奥に眠ることになった。

harukiiのブランドコンセプトを印字したカードを
自分で作っている。
その紙が無くなったので、渋谷の伊東屋に行った。

今度は少し厚め、そして少しだけ温かみのある表情の紙を選んだ。
可笑しかった。
帰って袋を開けてみると、
15年前に選んだ『引っ越しました』カードと全く同じカードだ。
少しだけ生成り色で、少しだけ手漉きの洋紙の感触に近いもの。
15年間、私の好みは変っていなかった。


この温かみのあるカードは、インクを優しく吸収してくれる。
ストールの色が穏やかに写る。
持った感じも、かさりとしていて軽やか。
今の私も、この紙がとても好き。


だけど、私の好みがこれから15年間、
変らないかというと、そうは思わない。

ここから5年、10年、15年。
劇的とまではいかないけれど、
かなり大きな変化があるのではないかと、予測している。

過去15年は、ジャンプのために大きく屈んでいた時期。
何かを溜め込んでいた時間。
とても長くて、そんな時間になっているとは、その最中は全く思っていなかったが、
今思い返すと、準備期間だったんだなぁとつくづく思う。

15年後、また何かのカードを作るとき、
私はどんな紙を選ぶのだろう。
すごく違っていてほしいな。
すごく変わっている自分に会いたいな。

でも、また同じ紙を選んだとしても、
それはそれでいい。
それもとても面白い発見にいなるだろう。

今、私の後ろでキャノンの印刷機が、
身を震わせながらカードを刷っている。
ちょっと厚めのこの紙を、少し飲みづらそうに飲み込みながら
それでもジャッジャッと印刷している。

今朝は、少しどんより曇っている。
雨が降るのだろうか。
あたたかいカフェオレを飲みながら、
カードが刷り上がるのを待とう。





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