なんといっても、これが一番すごいこと



2012年9月21日(金)

いろいろ差し迫ってきた。
harukii 2013春夏商品の発売スケジュールが固まってきたからだ。

11月中旬までに、二つの商品の販売を開始する。
通常、春夏商品というと、1月のセールシーズンを終えた直後から発売が開始になる。
しかし、もし間に合えば今年のクリスマスにプレゼントとしてお使い頂きたいと思った。
そのころにぴったりな商品があるからである。
その商品を皆様の元に早く届けたいと思った。
そのため、最初の計画より、かなり早く販売をスタートすることに決めた。

その商品は、シルクとカシミヤを混ぜて作った糸で織ったストールを、
ぼかし染めにしたもの。
長いバージョンと、短い正方形のバージョンの2品番で発売する。

東京はやっと秋らしくなり、一雨ごとに気温が下がる気候になってきた。
日中はまだまだ暑く、ノースリーブで過ごせてしまうが、
11月ごろには、きっとかなり涼しくなっているだろう。
その時季、薄くて温かいストールが、大活躍してくれるだろう。
今、工場さんにこの商品を大急ぎで生産して頂いてる。


温暖化してきた日本では、昔の11月はかなり寒く、
もう冬と呼んでも良いぐらいだったが、
いまは晩秋くらいの気候だろう。

『秋深き 隣は何をする人ぞ』と読んだのは、誰だっけ。

インターネットで調べてみる。
松尾芭蕉。
元禄7年(1674年)9月28日作。
51歳。
丁度今頃作った句なのか。
実際の気候はどうだったかは分からないが、
もっともっと気温は低かったのだろうと思う。

この日、芭蕉は俳席を設けていたが、
体調が悪く自身は参加できず、この句を俳席の場所に書き送った。
その後芭蕉は完全に床に伏してしまい、
起き上がって作った句は、これが最後となってしまった。

病床で伏したまま作った最後の句は、

『旅に病(やん)で 夢は枯野をかけ廻る』


辞世の句ではなく、生前最後の句。
芭蕉はもっと生きるつもりだった。
しかし、この句を作った4日後、10月12日に帰らぬ人となった。

この時代の人たちの、なんと一生の短いことか。
芭蕉は51歳のこの時季に、病気で亡くなってしまった。
病床で秋の哀愁を読み、生きる希望を縷々として持ち続けながら、
病に勝てずに息を引き取った。

私もこの秋、同じ歳になる。
そして、会社を立ち上げ、ブランドをスタートさせ、商品を発売する。
言ってみれば、二度目の人生をスタートさせる。
何という時間の違い。
環境の違い。
身体の違い。

芭蕉の時代には、個人ができることが今よりもっともっと少なかった。
それだけに、生きることがことがシンプルで、
一つのことに集中し、深くまで関わっていただろう。
決して今の時代の方が良くなった、とは言えない。
生活や文化の質、人間の質、で言えば、悪くなっているのかもしれない。

ただ、この歳になっても、全く新たな夢と希望を持ち、
そして、それが実現できるということは、
やはりとても恵まれている。

私は一人で会社を興した。
やろうと思えば、何でも一人でできてしまう。
情報も道具もすべて揃う。
時間をかければ、知識も技術も高まる。

でも、その分だけ、一つのことが浅く薄くなってしまう。
良い商品を考え出して、実際に作り、お客様の手元に届ける、
という一連の作業の中で
一番私が力を注ぎたいところ、私しかできないところに
パワーが十分に注がれなくなってしまう。

私はそれが怖い。
芭蕉の時代のように、自分がやるべきことは単純に、
その分深くじっくりと行いたい。
そうして初めて、お客様に必要とされる、良い商品を世に送り出すことができる。

だから、自分がやらないことをなるべく多く作り、
仲間にお願いしている。
そのことが得意で優れている仲間に、そのことに集中してもらって、
深く掘り下げてもらう。

今、そんな仲間がたくさんいる。

・商品の設計をし、生産をしてくれる人
・ウェブサイトをデザインし、操作してくれる人
・販売のアイディアを練ってくれる人
・ロゴを作ってくれる人
・商品に付けるタグやパッケージをデザインする人、それを作る人
・展示会のブースをデザインし、作ってくれる人

今後きっと
・商品の写真を撮影してくれる人
・商品を身に付け、写真に写ってくれる人
が見つかるだろう。

そして、これが一番すごいと思うのだが、
・これらの人たちを、私に紹介してくれる人
が必ずいる。
求めなくても、必要なときに必ずその人が近づいてきて、
私に必要な人を紹介してくれる。

そう、すべての人が、紹介で知り合った人ばかり。
自分からドアをノックした人は、一人もいない。
これは、ホントに、ホントに、本当にすごいことではないだろうか。
こうして書き出してみると、
あまりのすごさに、眩暈がしそうなほどだ。

今、338年前に病の床に就いた芭蕉のことを想ってみる。
才能に溢れ、まだまだ句を作り続けたかった芭蕉の悔しさを想像する。
障子の外の高い秋空を眺めながら、
隣家の音に耳をそばだて、
衰えていく身体と会話する老人のこころを想像する。

やはり、私はとても恵まれている。
同じ高い空を見て、私にはそれを美しいと思う以外に感情はない。
とても恵まれている。
私がするべきことは、この仲間たちの力を商品に結集させ、
お客様に丁寧にお渡しすることだ。
そして、仲間の力に感謝することだ。

芭蕉の句が、それを今再確認させてくれた。
ありがとう。松尾芭蕉。
あなたもきっと、今私に必要な仲間だったんだね。


松尾芭蕉像 (葛飾北斎画)
ウィキペディアより


2013春夏 シルクカシミヤ平織ストール #1

2013春夏 シルクカシミヤ平織ストール #2





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