続・山形県に行ってきます



2012年6月7日(木)

そして再び、藤沢周平である。

藤沢周平の出身地は山形県鶴岡市。


日本海に面し、江戸時代には庄内藩の城下町として栄えた。

藤沢は幼いころ自分が育ったこの土地を、その著書の中で
「いくぶん気恥ずかしい気持ちで、ここが一番いい」と言っている。

  「そこにやや気恥ずかしい気持ちがまじるのは、
  私が挙げたような風景は、
  そこで生まれた私にとってはかけ替えのないものであっても、
  よその土地から来たひとたちにとって、
  それほど賞賛に値するものかどうかは疑わしいと思うからである。」

    ※「ふるさとへ廻る六部は」より引用

藤沢周平はいつも謙遜している。
自分だけではない、その小説の登場人物もよく遜らせる。
それも過剰にはさせない。読者が共感できる程度にとどめる。
さらに傲慢な人物を描いても、これもあまり執拗には表現しない。
その加減が、なんとも上品である。

そうだ、上品なのである。人の感情の機微にさえ。
登場人物の感情が読者の心に暴力的に入ってくるようなことがない。
そこが、私を心地よく時代小説に遊ばせてくれる所以なのだ。
この遠慮深さ、それでいて骨太にぐいぐい読者をひきつける力強さ。
これは、この土地に育つということが影響しているのだろうか。

今回の旅で、米沢のあと、この庄内平野にも行けることになった。
初めて訪れる土地。そして出会うであろう人々。
人との語らいを楽しみにできることが、今の私にはとても嬉しい。

どんな空気に触れることになるのだろう。
どんな人に会えるのだろう。
もしかしたら、近い将来この土地の人々とも仕事ができるかもしれない。
足繁く通うことになるかもしれない。
それよりこの旅で、自分を変えるような刺激を受けるかもしれない。
その可能性を求めて、私は明日、米沢から鶴岡に向かう。

贅沢な旅になる。
二つの興味深い土地を一度に回れるのだから。
山形の人の懐に入れて貰うために、
私は二晩吞む覚悟ができている。



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